無限プール

基本的に褒め言葉しか言わない

ハッピーメディアクリエイターの“越境”ー漫画テニスの王子様とテニラビしか知らない私が2018おてふぇすへ行った話

6/10の許斐剛パーフェクトLIVE一人オールテニプリフェスタ2018昼の部に行って参りました。
とても特異で貴重な体験ができたと思いますので覚書を残しておきます。

まず行った経緯から。高校生の妹がテニプリファンです。彼女はお友達と行く予定だったのですが、なんとお友達がドタキャンしまして実質門外漢の私が駆り出される結果になりました。私のテニプリ知識はタイトルの通りです。新テニの展開は妹やTwitterのフォロイーからふわっと仕入れていましたが作者のライブのことは知りませんでした。はっきり言って行く寸前までテニミュ関連で作者がゲストで来るみたいなライブだと勘違いしていた位です。
──実際のおてふぇすは作者を中心に、テニミュのキャストやVRのキャラ達がLIVEをしたり合間にお喋りをしたりする形式です。

そもそも作者みずからが自作をテーマとしたLIVEするジャンルはそうそうないと思います。(浅学な私はグイン・サーガの作者の栗本薫さんが劇団をやっていたという話くらいしか聞いたことがありません) 漫画を描くのが仕事の「漫画家」が歌うなんておかしいと思いました。また、 作者が自作のキャラと対話するというのはおもに昔の夢小説の後書きでしばし目にします。そういう訳で私は戸惑いました。宗教かな?くらいに。
けれど実際に行ってみて許斐先生の姿勢には「ハッピーメディアクリエイター」としての確固たる戦略が感じられました。今回の記事ではその話をしたいです。もうちゃんとわかっているファンな人は「今更気づいたの?」って思ってください

 テニプリはメディアミックスを大切に扱っている作品だと思います。その例として挙げられるのがテニミュです。テニミュ2.5次元流行の先駆にあたる長寿作で、これだけ長く原作と寄り添っている舞台作品って限られてくるんじゃないでしょうか。妹にテニミュの魅力を訊くと彼女の場合「初々しい役者の成長を見守るのが好き」というのが一番に来るみたいです。私は舞台系のオタクをやってないんですが、そういうのは自分が一緒にコンテンツを育てているような感覚を持つことによる一体感と密接に関わってくるのではないでしょうか。舞台というのは観衆に開かれたハコです。「実写化」に拒否反応を示す人でも舞台はあっさり受け入れてたりします。それは二次元を三次元に落とし込んで鑑賞体験をより身近なものにさせる2.5次元の目標を舞台が再現しやすいからなんじゃないでしょうか。
 こんな話を始めたのは許斐先生がテニミュを非常に重視してくださってることに、彼の作家性みたいなものが表れていると思ったからです。
 おてふぇすで「幸村くんゲーム」でとりわけそういう方向性を強く感じものすごく驚いたのですが、あの舞台では三つの方向性での対話が行われていました。
VRキャラクター−許斐先生
許斐先生−観客
VRキャラクター−観客
 ……次元がねじ曲がっていますよね!
本来物語というのは私達に語りかけるようなていを為していてさえ「作中の聞き手」が存在しているものです。その聞き手に読者が結果的に照射されていることはあっても、壁は消えません。けれど許斐先生はおてふぇすにおいて越境を試みています。許斐先生が観客に与える物語は注意深く開けなくてはならぬ美しい箱ではないようです。それはすぐに綺麗な音楽の流れてくる開かれたハコなのです。そこではキャラクターがすぐそばにいて、「わたし」に話しかけてきます。
 幸村くんに話しかけられた女性の感無量といった様子を見ていてこっちまで幸せになってしまいました。
 妹によればテニプリではファンの女の子に向けたような雰囲気のキャラの歌が出ているそうなので、夢女子への福利厚生もまず最高級のようですね。
 VRキャラクターどうしの会話への感動についてはオタクなら誰でもわかるでしょうから割愛します。(話してる〜〜!ってなる)
 許斐先生とキャラクターのやり取りの場面も感動しました。許斐先生が手塚国光に「青学のみんなと別れたこと後悔していない?」と聞く場面、そして金太郎が許斐先生に「コシマエとまた戦いたい」という場面。(台詞にうろ覚えの部分があったらすみません) それは彼らの心理を観客にはっきり伝えられる部分であると同時に、作者のキャラ愛も伝えてくれました。それに、そういう言葉を聞く時に私はキャラクターが「生きている」と思うのです。

 こういう訳で、許斐先生は漫画家の領域を越え、次元さえも越える開かれたハコの創造によりファンとの距離をより縮める挑戦を行なっているようです。キャラクターが自分のすぐ近くにいて話しかけてくれるというのは本業の夢女子でなくても「あなたは一人ではない」と言われているような感慨がありました。そういう方略でファンを喜ばせようとしている許斐先生は本当に努力家な人なのだろうと思うし、新しいものを見られた私も滅茶苦茶幸せです。許斐先生を支えてくださっているファンの方々にも感謝です。面白いフラスタを個人で送っている方がいっぱいいてパシフィコではびっくりしちゃいました!

とりあえず発表終わったら新テニスの王子様を読み始めますね!!!!!